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Sweet Memories. [昔話]

開店から半年が過ぎた頃になると、固定客も次第に増え、
コーヒーで80杯前後 ランチが20食ほどは出るようになり、
ようやく店の経営も軌道に乗り始めた。

とは言っても、水商売なんだから蓄えが無いことには、いつ潰れてもおかしくないんで、
銭湯代程度の現金以外は、全て貯蓄に回した。


オフィス街が近いこともあり、定休日は日曜日に設定した。

人並みに休日ができたのは嬉しかったが、使える現金がないことには、遊びに行くどころか食事すらできない。
仕事中なら食パンの耳をかじったり、賄いで腹は満たされるけど、休みだとそうはいかない。
日曜日だというのに、部屋で過ごすしかなかった。



折しも季節は冬。
陽が当たらない部屋は薄暗く寒く・・

暖房器具すら買えないので、寒さをしのごうとオーブントースターの扉を開け、
つまみを右いっぱいまで回し、手をかざして暖をとる。


「暖か〜い( ´∀`)」



「チン!」


15分のタイマーなんてあっという間。
すぐにまたツマミを回す。


「暖け〜♪( ´∀`)」



「チン!」



寒さと侘びしさが15分間隔で訪れる・・





そんな生活をしてた ある月曜日午後の営業中。
そこそこの客数で賑わう店内。


フラスコにお湯を入れ、フイルターと人数分の豆を入れたロートをセット。
深煎りの豆に合わせて弱めの火力で上げながら、マドラーでかき回す準備をしつつ、時計の秒針をチェック。

かき混ぜるタイミングや速さ、回数、抽出時間。
少しでも違うと味に差がでるので、細心の注意が必要な作業だ。

サイフォンが3つ並んでるので、3つとも回してると他の仕事は出来ないほど。


そんな最中にカウンターからココナッツオーレのオーダーが入る。


クソッ!この手が離せないときに滅多に出ないココナッツオーレかよ!
あんなクソ甘ったるいのをよく飲むな?


とは思いながらも、元カノと神戸元町でココナッツオーレを飲んだのを思い出してた。
余りにも甘いんで、その元町で飲んで以来、味見でしか飲んたことはない。

嘘をついて別れてからだから、もう一年以上 連絡もとってない。
元気なんだろうか・・



  5人分のサイフォンを落としながら3人分のサイフォンを上げ、
  その間に手鍋に牛乳とココナッツパウダーを泡立て器で溶かしホイップとスライスアーモンドを準備。
  4杯分のコーヒーを温めたカップに注ぎ、余った分は自分の飲みかけのカップに入れ、
  3人分のサイフォンを落とし、カフェオレボウルを準備した後で、やっと一息ついて顔を上げた。


「ふぅ・・。えっちゃん、そろそろソフトドリンクくらい作ってくれへ・・・」

「!!!!」


カウンターの向こう側でソーサーの準備をするえっちゃんの隣に、
目を真っ赤にして今にも泣きそうな顔の元カノが座っていた。




「こんな甘いの飲んだら太るで?」


「バカ」







その晩、暖房器具が増えたのは言うまでもないw
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Thriller [昔話]

ホテル街の少し向こうに、「菱形」の事務所があり、
店の斜向かいのマンションには 「菱形」所有の部屋もあったことから、
その筋の方々もよく来店されてました。


真夏でも長袖着てる人がほとんどで、墨でゴルゴ13みたいな眉にしてる人も多く、
来店者全員がゴルゴ13!なんてこともよくあった。

でも、うちの店に来られる方々はとても優しい人ばかりで、
その辺のサラリーマンと変わらないくらい物静か。

近所のおばちゃん連中の方が よっぽどヤクザだったくらい。


そんなに物静かな方々もお仕事はちゃんとしてる様で、
手帳を見せながら挨拶する人達が何度も店に来られて 写真を見せていただいたり、
店内が見渡せる席に一日中座ってたりしてました。



事務所とマンションへは、よく出前も行った。

さすがに女の子に行かせるわけもいなかいんでワタシが行くんだが、
マンションの場合、必ず玄関じゃなく中まで運ばされる。
事務所の場合は門番さん。


マンションの玄関の傘立てには木刀数本と金属バットが立てられ、
ペット禁止なはずなのに キャンキャンとよく吠える犬を飼い(夜のみはり)、
リビングのソファーは黒の革張り(威厳)、
カーペットは無く(もしものとき滑らないように)、
低い長テーブルは厚めの天然木(盾に使える)。

という装備w


そんな装備にに似つかわしくない、三脚が付いた反射照明が3機に、空の三脚が2つ。
何でだろう・・とは思ったが、まさかこんな場所で資金源を作っていたとは思いもしなかった。

あの日までは・・




マンションからピラフとオムライスの出前注文があったので、両手にトレンチを持ち 階段を駆け上がり、
両手が塞がってるんで、扉の前で声をかける。

「トマトで〜す!」

間もなく扉が開いて、中から住人が顔を出したんだが、
人差し指を口の前に立てて「静かにしろ」という合図を出す。

数度頷き、いつものように中まで運んでリビングのテーブルに置こうとしたとき、
びっくりしてトレンチを落としそうになった。



リビング隣の部屋では、キレイなおねーちゃんと若い衆が撮影の真っ最中!

「ちょっと待ってや」と耳元でささやかれ、その場でしばしフリーズ。

他人の「やってる」とこなんか見るのも初めてだし、ベッド脇に裸でスタンバってる野朗の姿を見るのも初めてw
ドキドキするやら、興奮するやらで、脚はガクガクww


テープが止まってるうちに代金を貰ったんだけど、
代金とは別に口止め料としてVHSのテープを3本貰った。
ちょっと嬉しい♪


「一発やってく?」

とお誘いをうけたけど「店があるんで・・」と遠慮させていただいた。


店に帰ると えっちゃんが「遅かったね、何かあった?」と心配してくれたが、
事実を言えるわけもなく、「大丈夫」と言いながらテープをカウンターの奥に隠す。


大事にアパートまで持ち帰ったテープだが、ビデオデッキなんてあるはずもない。
店に行けばあるんだけど、天井から吊ってあるBOSEからしか音が出ない・・


仕方ないから先輩んちで鑑賞会したんだけど、
見ながら「出演しないでよかった・・」と心から思った。


恐い恐い・・・





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Silhouette Romance [昔話]

店をオープンするにあたって、自分なりにルールを決めた。


①特定のお客さんと親しくしない。

常連さんや友達が来店して、カウンターを挟んで話してて、特別に親しくしてると、
他のお客さんは気分良くないじゃない?

常連さんにも 一見さんにも 心地よいスペースを提供するために、特定のお客さんだけと談笑しない。



②店の女の子に手を出さない。

店の人間同士がペチャクチャ話してる店って最悪でしょ?
それが男女の関係を感じられる様なら、もう閉店した方がマシ!

そういう空気を作らないためにも、店の女の子にも そんな気さえ起こさせない様に気を使う。



この2点。

常識的な事だけだが、21歳の遊びたい盛りのワタシには、なかり高いハードルだった。




ウエイトレスの募集をかけたら、2日くらいで十数人の応募があった。

リフォーム最中の店内に来てもらい、10代から30代の女性を順番に面接し、
ワタシ好みの女の子 2人を選んだ。もちろん20代w


2人共 夜の仕事の経験があり接客的には申し分ない上、顔もスタイルもワタシ好み(* ̄ω ̄*)
証券マンやOLさんがターゲットだったので、服装や髪型も清潔感のある格好を指示した。

それもワタシ好みww



そんな好みの女の子がすぐ近くに2人も居るのに、手を出せないもどかしさ・・

プラトニックな空気を感じつつも、店主とウエイトレスという
一定の距離をおいた関係を保っていました。


が、そんな女の子を他の男達が放っておくワケがなく、名前や電話番号聞いたりする男が続出!
朝昼夕に通うサラリーマンも多数ww

ウエイトレス目当ての男性客は次第に増えていきました。



客が増えるのは嬉しいんですが、黙って見てるだけなのは悔しい。

ウエイトレスをナンパしようとする奴には、特別に苦いコーヒーを出したり、話に割り込んだり。
カウンターに座らないように椅子を減らしたり。

頑張って抵抗してましたが、ルールを定めた以上、
ワタシ好みの女の子が、若手の証券マンの毒牙にかかる様を見てるしかない。

終いにゃー2人共持ってかれた上、店内でイチャイチャされる・・( ̄Д ̄;)オイッ!



他人の恋路を邪魔する奴はナントカ・・って言いますが、
自分で選んだ女が他の男と目の前でイチャイチャすんのだけは絶対に許せません!

付き合うのを止めるか、話すのを止めるか、店を辞めるか。どれか1つ 決めてください。
と言うと、2人共あっさりと辞めてしまった(笑)



この時から「好みの女の子は雇わない」というルールが1つ増えた。

次は人妻にしよう(* ̄ω ̄*)




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Karma Chameleon [昔話]

客が少ないカフェレストってのは、重宝する方にとっちゃー便利に使ってる方々も居まして・・


店から200mも行けばラブホテル街ということもあり、
ホテルのオーナー達もよくこられました。

ホテルの「あるある話」なんかを、面白可笑しく伺い・・

「えっちゃん(ウエイトレス)と来たら半額でイイよ♪」

「いや、うちなら無料にしてあげる!」

てなことをいつも話してました。


ラブホテルって、満室になったら看板のライト落とすじゃない?
土曜の夜に誰んちが先にライトを落とすか勝負してて、負けた人がコーヒーチケット買う。
そんな遊びもよくしてました。

お金に不自由してない在日の方々でしたから、純粋に勝ち負けを楽しんでる感じ。
貧乏だったワタシにゃー眩しすぎる世界でしたね。


気になってたホテルの隠しカメラですがw
ドアの外に監視目的で設置してる以外は、絶対設置しないのが業界のルールだそうです。
守らないと自分たちの存続に関わるからだとか。

自分で撮って楽しむタイプのカメラを置いてるトコもあるようですが、
「ソッチの消し忘れには十分気をつけてください」とのコトでした。




ある日のこと。

カウンターの角の奥側に、よく来る若い男性客が座った。
いつも彼が座る場所だ。

ワタシと同年代くらいか ちょっと若いくらい。
細い身体に長い手足、鼻にかかるくらいに伸ばした髪はサラサラで、
誰が見ても美少年と言うだろう。

いつもカフェオレを注文して、無言のまま飲み、いつも30分程で帰るんだが、
その日は珍しく1時間ほど座っていた。



そこへまた1人来客。

コーデュロイのジャケットを着こなした年配の男性。
カフェオレ客と少し間を置いたカウンター角の手前に座り、コーヒーを注文した。

そして雑誌を読みながら半分ほど飲んだだけで「ごちそうさま」と店を出た。
その後を追うように、カフェオレ客も店を出る・・・



店の窓からカフェオレ客が見えなくなった頃、
リバティー(ラブホテル)のオーナーが口を開いた。


「あの2人、うちの客です」




Σ(・ω・ノ)ノ




「つ、つまり・・そういう関係ってコトですか?」

「けっこう居ますね」



雑誌の中やフィクションの話だと思ってたコトは、
普通に転がってるんだ・・と感心した。




客が少ないカフェレスト。

便利に使っていただいて、ありがとうございます♪





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We are the world [昔話]

ランチが予想外に出ないことで、店の経営が次第に辛くなってきたので、
予め準備していた夜の営業を、オープンの翌月から始めた。


夜の営業とはいっても、メンズだけの営業で ピルスナー系の瓶ビールとショットに、
つまみ系の一品料理を提供するだけの営業。

アメリカンな店の雰囲気と合わせてオシャレなツマミを出すことで、
仕事帰りのサラリーマンやOLさんで毎夜賑わった。
狙い通りだった。



が、近所の奥さん連中が来だしてからは様子が一変した。

酔ってくるとデカイ声で騒いだり、

ウェイターを隣に座らせようとしたり、

有線に合わせて歌ったり・・


下品な女性客ばかりが増え、男の客は次第に来なくなった。
結構ハードな店作りをしたつもりだっただけに、予想外の客層に戸惑っていた。



ある晩、借金するのにお世話になった女性が来店した。
歳はワタシより一回り上の33歳だが、小柄で華奢な可愛いタイプだから、実年齢より若く見える。


カウンター、ワタシの正面に座り、Early Timesをロックで注文した後 こう言った。

どう?私が宣伝するから女の客が増えたでしょ?」


お前かー!下品の根源は( ̄口 ̄;)!!


世話になってる以上、そう言えるわけもなく・・

「お陰様で売上も上々です」

と言うと 調子に乗って

「今度ライブしましょ!私の知ってる有名なバンドが無料でやってくれるから♪」

「それイイですね!是非お願いします!」


とは言ったが・・
後日来たのは有名なカントリーバンドだった・・( ̄Д ̄;)

その世界じゃ有名な人達でしょうし?無料で演ってくれるのは有難いけどね?
ワタシの店でバンジョーやアコースティックギターやバイオリン鳴らすの止めてくれる?
ウッドベースでか過ぎやしww


それでも断れないワタシ。



女性は来店すると必ず閉店までいて、ワタシのアパートへ泊まって帰る。
まるで絵に書いたような関係(笑)

早朝6時の喫茶から夜の12時までの営業に加え、夜の奉仕までしてたワタシは、
昼間の営業中に過労で倒れ、気が付きゃ病院のベッドで点滴をうたれてた。


店主のいない店内では、We are the worldのレーザーディスクがリピートされていたらしい・・




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シャイニン・オン [昔話]

尼崎の商店街の 国道2号線を挟んだ反対側。
路地裏がラブホテル街になっていて、人通りもまばらな裏通りにあるビルの1階を
間借りして 店を始めたのは21才のときだった。

銀行も国庫も、21の若造に一千万を超える金を貸してくれるワケもなく、
名義を貸してもらうために辛い日々を過ごしたのは、それだけ自分の店を持ちたかったから。

今となっては、何てバカで計画性のない事をしたんだろうと思う。

若さなんでしょうね。


それでも当時は真剣だった。

忙しくなって会えなくなるのと、多額の借金を抱えることになったんで、
当時付き合っていた彼女に「他に女ができた。もう会えない」と言って分かれた。

アパートも格安物件に引っ越した。
トイレと流しはあったが、1階で昼間でも薄暗く、電気を点けないと生活出来ないが、
昼間は店だから問題無かった。





店の名前は「Petit Tomato」

夜勤明けのタクシー運転手や、近くの証券マン、団地の主婦層に照準を合わせ、
早朝開店、ランチメニューとパンメニューに重点をおいた、席数20程度の小さな店。

もちろん、友人が長居できるための くつろげるカウンターも作った。



オープン当日、モーニングサービスだけで50杯を越えたことに気を良くして、
サービスランチのトンカツは多めに準備することにした。

イーゼルに黒板をセットし、従業員の女の子にランチの絵を描かせ、
20人前のトンカツと、一玉分のキャベツを千切りにし、付け合わせにモーニングで残ったポテサラ。
ワカメスープの準備をした後、ランチプレートを調理場いっぱいに広げ、キャベツを盛って準備万端!
後はオーダーが通り次第、トンカツ揚げればイイだけにする。



が・・・

14:00までに通ったサービスランチのオーダーは2つ( ̄Д ̄;)


証券会社の女性社員や近所の主婦であふれかえったランチタイム・・
客が注文するのは、オープントーストやサンドイッチ等のパンメニューと軽食だけ・・
食後にはコーヒーじゃなくて、ソフトドリンクやデザート・・

( ̄Д ̄;)ヤメテ・・


厨房にもう1人入ってもらったが、いっぱいに広げたプレートが邪魔で仕事になんないから、
キャベツを盛ったままのプレートをゴミ箱に放り込んだw

もうヤケクソ(笑)


それでも料理を出すのが遅れる。

順番を間違える。

待ちかねる客。

外にも長蛇の列。

怒って帰る客・・・




はい。

トンカツ定食でワタシの店は終わりました。。。。

二日目からのランチタイムは楽勝です。
なんせ10人も来ないんですからww


モーニングサービスが終わりかけの10:30からは来客もまばらで、
店内に居るのはワタシと女の子だけ。という事が多かった。

女の子達をカウンターに座らせ、ワタシは内側にスツールを持ち込んで座り、
サイフォンに残った酸っぱいコーヒーを、3人で分け合って飲んだ。

そんな静かな店内に、有線放送からよく流れてきたのがこの曲。





分かれた彼女のことを思い出し、「孤独さ俺もその1人」の歌詞に胸が痛んだ。





あれから30年近く経ち、何気なくつけたAMラジオからこの曲が流れてきて、
あの頃の事が鮮明によみがえってきた。

カウンターの中から見える外の光景

壁紙の色

サイフォンに残ったコーヒー

湯気を出すポット

静かな店内

ダウンライトに照らされた床

出窓に置かれたステンドランプ・・・


まるで映像が頭ン中で流れた様だった。

音楽ってスゴイね。
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